「ダンテを読んで」誰にでも潜む悪魔

リストのピアノ曲に「ダンテを読んで」という曲があります。恐らく、バロックから現代までの幅広いピアノ曲の中で、僕にとって最も縁遠い部類の曲でしょう。僕の趣向から、あるいはテクニックのタイプから、あるいはこれまで垣間みた精神世界からあまりにも遠い所にある曲だと言えます。

 

学生時代に参加したマスタークラスである先生から「ダンテを弾いた事があるかい。似合うと思うから是非やってみるといいよ」と言われた事がありました。話の流れでポンと出た発言なので、どれだけ熟考された言葉なのか分からないのだけれど、せっかく頂いたお言葉なのでいちおう記憶の片隅に置いていました。「あの曲が上手く弾けるなんて冗談でしょ」。内心そう思いつつも。そのままダンテは放っておいたのですが、この頃恐る恐る手を付けてみました。

 

「ダンテを読んで」。タイトルの通りダンテの神曲から発想を得て書かれた曲なので、やはり「神曲」を読んだほうがよさそうです。でも、中世の叙情詩ってちょっと読むのは大変そうな代物です。漫画があるみたいなので、そちらから入ってみようか。それにしても、聴くに絶えない不協和音の連続。悪魔の増4度。どう逆立ちしても僕には馴染まないんじゃないかと思ったのですが、苦行のような譜読みを続けること数日。少しずつ悪魔の囁きがすうっと耳から体内へ入り始めたような気がします。人間って怖いですね。ということで、もう少し弾いてみてレパートリーにするか決めます。